ミンキーのひとりごと

  

母を亡くしてひとりになったシルバーのひとりごと

最後の買い物


貸金庫から必要なものを持ち出した後
銀行近くの大型ショッピングモールに入った。
入るとすぐに洋菓子が並んでいた。

傷まないように生クリーム、果物など
上にデコレーションしていない
ショートケーキを選んで


「これなら崩れないからお供え用に1つください」
「わかりませんが…」と


店員さんの顔が少し困ったように見えた。


箱の中でケーキが動かないようにと
一生懸命にしているのが後ろ姿でわかった。


「お持ち帰りの時間は」と尋ねられたが
食べるわけでもないので
適当に1時間ぐらいと答えた。
慌てさせたようで店員さんごめんなさい。


エスカレータで2階の衣料品売り場へ向かう。

紙のパンツしか母に買ったことがない。
普通の下着のパンツサイズがわからない。
履かせやすいように大き目にしよう。


「大きいサイズはありますか」と尋ねると
「そこにあります。2枚買うと安くなりますよ」と


2枚の値段は見ないで1枚取って買った。

お酒類などは棺に入れるので紙パックに
して欲しいと言われていた。


母はコーヒーが好きだ。
同じフロアにある休憩所の自動販売機で
紙パックコーヒーを1つ買った。

施設ではウォークマンで音楽を
母に聴かせていたが
スピーカーは内臓していない。
イヤフォンを付けて聴かせられない。


百円ショップがあるので
イヤフォンジャックに取り付ける
スピーカーを買った。


市内で一番大きなショッピングモールで
母に欲しいものが全部そろった。


これが最後の買い物になるか…。

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