ミンキーのひとりごと

  

母を亡くしてひとりになったシルバーのひとりごと

貸金庫の中


眠れない夜が明けて2日目の朝になった。


銀行が開くと同時に貸金庫に預けてある書類を
取りに行った。


貸金庫には金目のものは入っていない。
書類がほとんどだ。


葬儀屋の会員証、戒名に入れたい文字、
葬儀後手続きに必要な年金・生命保険証書
定期預金通帳、印鑑など


金目のものを入れてないのに
何故借りているか
使用料金は6ケ月1万円。
そんな必要もない書類ばかりだ。


父が生きていた頃
母の部屋は寝る場所以外ダンボール箱だらけ。


中には古い連絡書類、領収書などのゴミと
預金通帳、印鑑、証書類、家の登記簿、現金など
大事に残すものとが複雑に混じっていた。


母が痴呆症で滅茶苦茶にしたのではない。


父が預金通帳など持ち出し勝手にお金を使うので
わかりにくいように混ぜ合わせて
ダンボール箱に入れガムテープで閉じて隠した。


生活費などすぐに必要なものは母に聞けば
即座にダンボール箱から取り出すが
あまり使わない証書類などは曖昧で
すべて箱を開けないと見つけ出せない。


よくこんな手の込んだことをしたものだ。
知らなければ母がボケたかと疑うところ。


金庫を購入したが、父にこじ開けられたこと。
貸金庫を借りようとしたが空きがなかったこと。
母の苦労はわかったが。


こんなに滅茶苦茶ではどうしようもない。


近くの銀行に電話して貸金庫の空きがないか尋ねた。
自転車で30分ぐらいで行ける銀行に空きが見つかった。
すぐに借りて、先に大事なものを預けに行った。
これで母の心配も少しなくなった。


その後も整理は続いた。
わけのわからない封書、メモやノートが出てくるたび
母に尋ねては残すか捨てるか決めていた。


何でこんなことをするのか
怒りとため息で整理する日が何日も続いた。


今思えばこれでよかったのだ。


痴呆症もなく暗証番号などハッキリ覚えている
80歳頃の母に尋ねられる時に整理できて。


これがきっかけで
母が私に家計を管理するように頼んだ。


仕事に行っていたので、母に任せていたが
自分がしてみると大変なことがよくわかった。


先に父が亡くなった時、貸金庫は必要なくなったが
万が一私に何かあれば、介護が必要な母だけが残り
実家を離れた妹達は何もわからない。


大事な書類、証書、通帳、情報などを
まとめて残す必要があった。


火事や泥棒の心配ない貸金庫は
その時から大事な書類保管庫となった。

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