納棺
湯灌した同じ部屋に入ると
ディサービスに行く洋服を着た母が
白い棺の中に寝ていた。
「スカーフを結んで下さい」と女性が
これが最後の着替え。
一番に私が近づき
「いつもは…。」と
うまくできない。
2番目の妹が近寄り
首元が隠れ、顔が見えるよう横で結んだ。
化粧して唇は赤味があった。
「手も塗った。きれいになってる。」
と妹2人がつぶやいた。
手首は湯灌前注射後で浅黒くなっていた。
お供えのケーキ、紙パックコーヒーを
葬儀担当が先に棺へ入れた。
ケーキは中身が飛び出さないように
ラップで包んでいた。
帽子、眼鏡、入れ歯、靴は母の側に私が置いた。
担当が読み上げながらつぎつぎと棺に入れた。
白の仏衣と帯、杖、振袖と帯
楽譜、赤富士の絵
紙の六文銭
襟元に白い布を重ねて置き
納棺は終わった。