ミンキーのひとりごと

  

母を亡くしてひとりになったシルバーのひとりごと

納棺で入れるもの・私の願い

母が亡くなった時、
絶対に棺に入れたいものがあった。


振袖と帯だった。


母のではない。


時期は戦後間もない昭和20年代後半
母より先に妹が結婚することになった。


間に入った人が母の振袖を
嫁入り道具に華を添えたいので
貸して欲しいと願い出た。


振袖はとても良いもので袖を一度も通してなく
とても気にいってたので一度は断ったと。


一旦借りるだけで必ず後で返すからと何度も頼まれ
泣く泣く貸したが
結局返して貰えなかった。


母が妹に当時のことを後で尋ねたら
「着物のことは知らない」と返答。


結局、母の振袖は行方知れず。


その悔しい思いを知ったのは母80歳頃だった。


母の悔しさはかなりのもので嘘では無いだろう。


よくわからないことが…。


間に入った人が仲人なのか。


婚礼前に
妹の婚礼だから意を決して貸すのだと
母は妹に確かめなかったのか。


婚礼後になぜ尋ねる。


時代背景が違うのか、
当時は言えなかった、出来なかったのか
歯がゆい。


理解できない。


母の悔しさが激しかったので
それ以上聞くことが出来なかった。


痴呆症もなくしっかりしていた頃なので
本当だろうと。


今となっては確かめようがない。
間に入った人に母が騙されて、
振袖を取られたのではと。


母のやりきれない気持ちは強く伝わった。


そんな未練を残してあの世へ行って欲しくない。
母には言わず棺に私の振袖を入れようと
以前から決めていた。


母のものとは似てもにつかない振袖だが
娘から母への贈り物として
悔しさを断ち切って欲しいと願う。

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