「お母さんに会いたい」というお母さん
施設に居た最後1年半ぐらいは、
認知症が進んだのか、母は
、
「お母さんに会いたい」とよく言った。
「Kさんのことやね」と私が祖母の名前を言うと
「そうや」と母が
「Kさんはもう亡くなったよ」と言うと
「え~!」と驚く。
母の記憶は過去に戻っているのか、
亡くなった、自分のお母さんKや、お祖父さんAに
よく会いたいと言った。
『お母さん』だけでは、私も母をそう呼ぶので
間違えないよう名前で言った。
嫌いなおむつ交換や、治療で痛いことがあると
「お母さん、お母さん」と呼んだ。
その都度、亡くなったことを告げる、
母が驚くを繰り返す。
私は不幸なことも、ごまかさないで
ほんとうのことを言った。
こんな時、他の人はどう対応しているのか?
母は、真実を告げても驚くだけで、
それ以上、変わったことはなかった。
嘘をつけば、また、重ねて嘘をつくと思い、
私は真実を言うことを選んだ。